市長はつらいよ
当ブログ 2015年5月25日付記事 「リスクがクライシスに発展するきっかけ」
組織において、個人が問題の存在を認識しながらも、それをリスクとして組織内で共有しなかったために、本来なら封じ込めが可能であったリスクが、制御困難なクライシスに発展することがよくあります。
で、岩手県奥州市が廃棄物を埋設された土地を購入してしまった結果、廃棄物の撤去費用が非常に高くついてしまった事例を紹介しました。
事態はそれだけでは収まらず、奥州市長と職員6名に対し、住民団体から、廃棄物処理費約6316万円の返還請求に関する住民訴訟が提起されました。
2015年11月20日付 毎日新聞 「訴訟:廃棄物の処理で奥州市を提訴へ 住民団体/岩手」
奥州市の住民団体「統合胆沢中学校造成地問題を考える会」(高橋信一会長)は18日、市が同中学校の建設予定地から出土した廃棄物を処理したのは不当だとして、小沢昌記市長と市職員6人を相手取り、処理費の返還を求めて住民訴訟を起こすことを明らかにした。19日、盛岡地裁に提訴するという。
市や同会によると、同中学校の建設予定地で昨年10月、廃棄物が見つかり、市は今年4月から撤去作業を実施した。撤去費用として、約6316万円を支出している。
これに対し、同会は「用地の購入で財務規則に違反がある」と主張。8月に住民監査を請求していたが、10月に請求を棄却された。
このため、「故意や過失で法律上保護される利益などが侵害された場合、その損害を賠償する責任があるとする民法に違反している」として、住民訴訟を起こすことにした。住民側は「用地購入で、市は廃棄物があるのを知っていたはず。費用の支出には財務会計などで違法行為があった」と訴えている。
市は「19日にコメントを発表する」としている。
そして、実際に、11月19日付で提訴されました。
2015年11月20日付 毎日新聞 「奥州・中学校の廃棄物処理費用の返還を求め住民が提訴/岩手」
奥州市胆沢区の中学校建設用地から見つかった廃棄物の処理費用の支出を巡り、住民団体代表、高橋信一さん(71)ら13人は19日、小沢昌記市長ら7人に処理費用など約6948万円を市に返還するよう盛岡地裁に提訴した。小沢市長は同日、「訴状を確認しておらず、現時点でのコメントは差し控えたい」との談話を発表した。
奥州市の内部調査では、
報告では、取得前に現地の職員が「予定地にはさまざまなものが埋まっている、と聞いた」とする情報を庁舎内の職員に報告。しかし、報告を受けた職員は「何かが埋まっているかもしれないという程度で聞き取った」として、埋設物のリスクに注意を向けなかったと指摘した。
※2015年5月22日付 毎日新聞 「奥州の中学校建設地産廃:用地取得で「不適切な処理」 市が全協で報告 /岩手」より引用
と、現場の市職員は廃棄物埋設の可能性を把握していたものの、その後情報が伝達されるうちに「大した問題ではない」とされ、危険性の認識が共有されない結果となっていたようです。
自治体の首長には、その地域における絶大な権力と名声が約束されますが、
歯車が少し狂うだけで、今回のように損害賠償請求のリスクにさらされるわけですから、
やはり楽な仕事ではありませんね。
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2015年11月24日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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