許可失効目前の必死のパッチ

「必死のパッチ」というタイトルを付けましたが、どうやら関西地域でしか使われていないスラングのようですので、念のため用語の意味の解説URLを張り付けておきます。

謎の関西弁「必死のパッチ」の正しい意味と使い方

さて、誰が必死なのかについてですが、愛知県(知事?)が必死のパッチの模様です。

2016年6月26日付 CBC NEWS 「ダイコーの産廃処理業許可取消へ

 廃棄カツなどを不正に転売していた愛知県稲沢市のダイコーについて、愛知県は週明けに産廃処理業の許可を取り消す方針をかためました。

 稲沢市の産廃処理業者・ダイコーは壱番屋の廃棄カツなどを不正に転売していたことがわかっています。

 また、県に届け出ていない倉庫を稲沢市や一宮市に持ち、大量の廃棄物を違法に保管していたことも明らかになっています。

 これらの法令違反を受け、愛知県はダイコーが産廃処理業の許可更新の期限を今月28日に迎えるのを前に、産廃処理業の許可を週明けに取り消す方針をかためました。

 今月8日から県はおよそ4000万円を負担してダイコーの本社や無届けの倉庫に残る廃棄物の回収を進めていますが、許可取り消し後も引き続き行うということです。

当ブログ2016年4月25日付記事「愛知県はダイコーの許可をいつ取消すのか?」でも指摘していたとおり、少なくとも、岐阜県と三重県がダイコーの許可を取消した3月下旬の直後である4月上旬には、愛知県はダイコーの許可を取消すべきでした。

大部分の善良な愛知県職員の方は先般そんな理屈はご存知のはずですが、愛知県知事のプレス対応を見る限り、「ダイコーの許可を取消すと、廃棄物の撤去が進まない」と思っていらっしゃる節がありました。

以上はすべて筆者の勝手な憶測と推量でしかありませんが、このタイミングで許可取消を行う意義は「許可取消をしたという実績を作る」こと以外にありませんので、良い線を突いているのではないでしょうか?(笑)

行政官は全員知っている周知のことと思いますが、
「行政が許可を取消さないでいてくれる」という理由で、不法投棄物を自主的に撤去し、撤去後に更生(?)する不適正処理業者というものは存在しません。

実際、「許可取消をしない」という愛知県の恩情(?)に対するダイコーの唯一の反応は、「何もしない(≒できない)」でした。

また、不法投棄物を撤去させる上で、その業者の許可内容が制約になることもありません。

愛知県の場合は改善命令でしたが、措置命令の対象になった場合、その対象者の責任において生活環境保全上の支障を除去する責務が発生し、命令対象者には速やかに命令された内容を実行する義務が生じるからです。

許可を取消されたからと言って、不法投棄した廃棄物を撤去しなくても良いという理由にはならないのです。

不法投棄物に関しては、不法投棄を行った張本人が排出事業者と同様の責任を負って、撤去をするのが当然でありましょう。

ただし、廃棄物処理法上は、このあたりの権利関係を明文化していないのも事実です。
具体的には、産業廃棄物処理業の許可取得不要とされる者の類型に、「措置命令対象者」が列挙されていません。

環境省は「行政処分の指針」の「第8 措置命令(法第19条の5)」の中で、

措置命令の被命令者が、当該命令の履行として実施する廃棄物の処理については、たとえその者が廃棄物処理業の許可を有しない場合であっても、無許可営業罪に該当するものではないと解されること。したがって、措置命令を効率的に履行させる必要があるなどやむを得ない場合には、業の許可が取り消された被命令者につき、当該命令の内容に従って自ら廃棄物の処理を行わせることも許容されるものであること。

と、解釈指針を示しています。

現在は、法律の隙間を解釈で埋めている状態ですので、次の廃棄物処理法改正では、ここを是非クリアにしていただきたいものです。

もっとも、明文化されたとしても、資力のない不法投棄実行者の自主的な撤去を期待することが困難であることに違いはありませんが。

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