情報漏えいのきっかけは内部からの告発?
当ブログ 2017年1月27日付記事「「自主廃業」選択の理由」で紹介した、「不法投棄業者がいち早く自主廃業をした件」の続報が入りました。
2017年1月28日付 東京新聞 「資源循環工場の不法投棄問題 県外産廃搬入「認めたい」」
↑東京新聞の見出しは、日本語としては若干意味不明です(笑)。
記者は、埼玉県が県外産業廃棄物を埼玉県内に搬入させることを容認したのが不謹慎だと言いたいのかもしれませんが、それは法律的には問題がありませんので、むしろ後段の埼玉県庁内の暗闘(?)の部分に反応します。
県が当初は不法投棄として調査を始めながら、許可取り消し処分をしなかった経緯には、不可解な点が多い。本紙が情報公開請求によって入手した内部資料からは、内部でも「通常の行政指導と異なる」などと、処分しないことを問題視する意見が出ていたのに、上司がこれを握りつぶしたことがうかがえる。
「環境テックには不法投棄の疑いがあったが、その事実認定のための県の調査が不十分であり、処分を行わないとした理由も合理的ではない」
昨年一月の県産業廃棄物指導課の内部文書で、ある担当職員は、テック社を処分しなかったことに疑問を投げかけた。担当職員は、環境省が通知した「行政処分の指針」を根拠に、▽県が立ち入り検査しかしていない▽テック社の廃業をもって調査を終えることは適切でない-などと指摘。
こうした問題がクリアされないのに、テック社の施設設置許可を存続させつつ後継の豊田建設への承継を認めるのは、「通常の行政指導と異なる」状況であり、「(他の)事業者への公平性を損なう」とした。
しかし、この文書に対し産業廃棄物指導課長は「調査を行ったが、処分に至る証拠は確認できずテック社は業の廃止を提出している。施設設置許可を取り消すことはしない」と手書きで書き加えた上で押印している。
担当職員は同年三月にも、「今の状態で県が現許可を『上塗り』して、取り消し検討対象の許可を消失させることは適当ではない」とする意見を記載したが、同課長は一月と全く同じ内容のメモ書きを書き加えていた。
一般人とは異なる、役人OBならではの感想かもしれませんが、
「一般課員が、なぜわざわざ文書で所属長に噛みついたのか?」という点が解せませんでした。
一般課員も人間ですので、所属長と違う考えを持つことは当然あります。
しかしながら、上意下達をモットーとする役所において、所属長の指示に公然と反抗することはまれですし、文書で所属長の考えを変えさせようとするのはさらにまれです。
こうした疑念が課員にある場合、いきなり誰にも相談せずに文書を突きつけるのではなく、上司への相談、あるいは所属長と面談の上、疑念を解消するのが、役所内でのお作法です。
また、所属長としても、「いきなりこんな文書を起案するな。方針は既に決定済みで、課内で共有したではないか。」と課員に説諭するのが一般的です。
東京新聞に掲載された画像を見ると、上記のお役所の作法からは外れた、「(課員にとっての)証拠を残すことが目的の文書起案」のように見えます。
外部からはうかがい知ることができない内部文書を、報道機関が狙い撃ちで情報公開請求していることから、不始末発覚のきっかけは、その文書の存在を知る(現役あるいは異動後の)埼玉県職員がリークしたものと思われます。
もしそうなら、朝日新聞のみならず、その他のメディアにも同時にリークしていたようですので、なかなか計画的な、組織に対する怨念ともいうべき執念が感じられます。
くしくも、当ブログ1月23日付記事「混ぜるな危険」で、
地方自治体がやってはいけない行動として、
パターン2 「許可取消」の対象となり得る違法行為に対し「何もしない」
自治体がわざわざ「違法行為に対し何もしないことにしました」などと記者発表することは有り得ませんので、これが一番表に出にくい行動です。
を挙げておりましたが、「一番表に出にくい」と書いた理由を実感いただけたと思います。
正確を期すために補足をしておくと、
仮に埼玉県が許可取消を前提とした再検査を行っていたとしても、聴聞の告知前に不法投棄実行者が「自主廃業」をしてしまうと、廃業によって許可が無くなった存在に「許可取消」をすることは不可能ですので、結論は変わらなかった可能性が高いです。
認めたくはありませんが、「(不法投棄実行者の)拙速は(行政の)巧遅に勝る」ということになります。
もっとも、仮に自主廃業をしたとしても、不法投棄をしたことが事実であるならば、業許可の有無とは無関係に、不法投棄実行者に措置命令を発出することは可能です。
ただし、措置命令が履行されない場合は、行政代執行をしなければなりませんので、行政としても相応の覚悟や緊急性が無いと発出できない命令です。
と、ここまで書いた段階で改めて思いましたが、今回の件は「行政の暗い闇が見えた」というレベルの不始末ではなく、メディアの騒ぎ過ぎとしか思えませんので、そもそも論でまとめます。
「埼玉県の肝煎りで作った環境産業拠点で不法投棄なんてされるなよ」
おあとがよろしくないようで・・・
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2017年1月30日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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