公訴時効は大丈夫?

山梨県北杜市において、山梨県が行政代執行を行った跡地から悪臭が発生している件については、当ブログでも取り上げたところです。
※当ブログ2021年12月16日付記事 「行政代執行の跡地から悪臭発生か?

この問題の続報が入り、行政代執行の原因となった産業廃棄物を放置した会社の代表者が急きょ逮捕されたとのことです。
2022年1月12日付 NHK 「北杜市の産廃放置 会社代表が廃棄物処理法違反か 逮捕

北杜市の会社が市内の2か所に産業廃棄物を放置し、県の撤去命令に従わなかったとして、警察はこの会社の代表を廃棄物処理法違反の疑いで逮捕しました。

逮捕されたのは、北杜市の肥料の製造などを行う会社B社のS代表(75)です。
警察によりますと、S代表は、別の業者から回収した産業廃棄物を北杜市須玉町に所有する2か所の土地に放置し、6年前に県が出した撤去命令に従わなかったとして廃棄物処理法違反の疑いが持たれています。
※筆者注 ブログに転載する際に、会社名と個人名はイニシャル表記にしました

今回の逮捕劇は、行政代執行から3年と3ヶ月後という、かなり遅いタイミングで実行されています。

通常の行政手順としては、措置命令が履行されないことが確定した段階、具体的には「履行期限」までに命令内容が履行されないことが事実として確定した段階で、措置命令違反で刑事告発を行うとともに、行政代執行に踏み切るのが一般的です。

多額の公金を使って行政代執行を行っている以上、当然、山梨県としても、行政代執行に着手するのと同じタイミングで刑事告発をしていたものと推測します。
※山梨県の本件に関するHPの記載を読む限りでは、告発の有無が書かれていませんので、あくまでも「個人的な推測」でしかありませんが。

さて、廃棄物処理法第19条の5に基づく措置命令違反の場合は、同法第25条の「5年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金、またはこれの併科」の対象となります。

そのため、廃棄物処理法第25条に該当する犯罪の公訴時効は「5年」となり、刑事訴訟法253条の規定により、「犯罪行為が終つた時」から時効が進行します。

措置命令違反の場合の「犯罪行為が終つた時」は、措置命令に違反したことが確定したときですから、「履行期限の翌日から」となります。

そして、山梨県が公表している「北杜市須玉町地内産業廃棄物不適正処理事案における行政代執行」によると、本件に関する措置命令の履行期限は、「大蔵地内 平成29年2月21日」「東向地内 平成30年3月21日」とされています。

期限到来がより遅い東向地内「2018(平成30)年3月21日」に関する措置命令違反とすると、
「2018年3月22日」から公訴時効が進行し、そのまま公訴されなければ「2023年3月22日」に、公訴時効が完成します。

公訴時効完成まであと1年間の猶予はありますが、かなりギリギリに近いタイミングでの逮捕であることがわかります。

措置命令違反の場合は、法律違反の事実が外形的に明白であるため、被疑事実を固めるために4年間の捜査期間が必要であったとは到底思えません。

もちろん、措置命令違反は悪質な部類の法律違反ですので、逮捕しないよりは逮捕した方が良いのは事実なのですが、「なぜ逮捕が今なのか?」がサッパリわかりません。

あるいは、ひょっとすると、「大蔵地内 平成29年2月21日」の履行期限が焦点となっているのかもしれません。

そうなると、2022年2月22日に公訴時効が完成してしまいますので、大慌てで逮捕した理由もむべなるかな、ではあります。

そうだとすると、これから本当に大慌てで公訴しないといけないですね・・・

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