なぜ大型バスを購入したのだろうか?

公園の駐車場に大型バスが不法投棄されるという、なかなか珍しい不法投棄事件です。

2022年5月21日付 読売新聞オンライン 「川崎の有料駐車場に大型バス1年放置…所有者は撤去応じず、ガラス割れ車体に落書き

 川崎市川崎区の「東扇島東公園」の駐車場に、約1年も大型バスが放置されている。乗用車6台分の駐車スペースを占拠しているうえ、何者かによって車体全体に落書きがなされ、割られた窓ガラスが周囲に散乱するなど景観や治安も悪化。市港湾局川崎港管理センターは所有者に撤去を要請しているが協力を得られず、対応に苦慮している。

 この駐車場は短時間利用のほか、乗用車は8時間以上800円、バスなどの大型車は同1600円で24時間まで利用でき、最長2日間駐車することができる。料金は出庫時に出口精算機で支払う仕組みだ。

 問題のバスの駐車を同センターが最初に確認したのは、昨年5月24日。2日間を超えて同31日まで止めていた。いったん料金を支払って出庫したが、6月1日に再び駐車しているのが確認され、以来約1年にわたってそのままだ。

放置されてから1年近く経ちますので、もはやバス所有者による撤去などは望むべくもなさそうです。

仮に駐車期間を1年間とすると
駐車料金だけで、1日¥1,600×365日=¥584,000円と、個人が支障なく負担できる金額のレベルを遙かに超えています。

もちろん、車両を放置した人間が本来は負担しなければいけない料金ですが、そもそも放置を企図した段階から、現金の持ち合わせが無いことが通例ですので、放置者が身銭を切って巨額の駐車料金を負担するとはとても思えません。

先に「個人」と書きましたが、

 以前所有していたバス会社は、取材に対し「現在の所有者ではなく、当事者ではないのでコメントは差し控えたい」と回答。同センターによると、払い下げなどを経て、現在のバス所有者は個人。所有者を特定した昨年7月以降、同センターが何度も撤去を要請したが応じないという。

とあり、元々はバス会社が所有していた大型バスの売却が繰り返されるうちに、現在は個人が所有者となっているとのことです。

「自動車リサイクル法」の施行以降、自動車の売買に際しては、正規の自動車ディーラー等を経由する場合は、新しい所有者が中古車購入の際に自動車リサイクル料金を負担するため、廃車の際にリサイクル料金を改めて再負担する必要はありません。


※画像は、「自動車リサイクルシステム」http://www.jars.gr.jp/gus/exju0010.htmlより転載

正規のディーラー等を介さずに旧所有者と新所有者が直接売買をする場合、この「購入時のリサイクル料金負担」や「自動車リサイクル券の譲渡」が無視され、「捨て値同然のお値打ち価格」で大型バスの所有権が移転してしまう可能性があるということですね。

ちなみに、大型バスのリサイクル料金は、国土交通省のサイトによると、「4万円から6万5千円程度」とのことです。

60万円近くの巨額の駐車料金を負担するよりも、改めて自動車リサイクル料金を支払う方が合理的であるのは間違いありませんが、人間は感情に基づいて行動する生物でもありますので、売買の当事者の誰かに、合理的な行動を取ることを躊躇わせるに十分な、事実誤認その他の感情的しこりがあったものと推察されます。

とはいえ、考えても考えてもよくわからないのが、「大型バスを購入した所有者の意図」です。

自家用車として大型バスを購入したとは思えませんので、営利目的なのは間違いなさそうですが、個人で運送事業を起こそうとしていたとも考えられません。
現実問題として、大型バス1台だけでは、運送事業許可を取得できませんしね。

となると、「右から左に流すだけで利ざやを得られる転売を狙った」と考えるしかありませんが、最後の最後に「ババを引く羽目になった」というところでしょうか。

いずれにせよ、不法投棄をして良いという理由にはなりませんので、民事のみならず、刑事事件の被疑者とされる可能性も十分にあります。

あらゆる物品の売買取引においては、最低限の法律知識を身につけておきたいところであります。

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