「家畜伝染病予防法」と「廃棄物処理法」の力関係

昨年の高病原性鳥インフルエンザの大流行に伴う鶏の大量殺処分後に、卵の価格が高騰したことは記憶に新しいところです。

卵を産む鶏の数はかなり回復してきたそうですが、鶏の飼料の価格が従来の7割以上も高騰しているため、卵が以前のような「物価の優等生」としての低価格に戻ることは無さそうです。

卵好きの人間にとっては悲報ではありますが、世界でも希有な生食できる卵を今後も食べさせていただくためには、必要不可欠なコスト負担と覚悟をしています。

今回は、殺処分された鳥の後始末に関する問題を通して、「廃棄物処理法」と「家畜伝染病予防法」の関係について見ていこうと思います。

2023年8月19日付 南日本新聞 「鳥インフル殺処分鶏 埋却地から悪臭液漏れ 埋め替え再び延期「9月以降」 問題発生から8カ月、県が謝罪 出水

 鹿児島県出水市野田の養鶏場で発生した高病原性鳥インフルエンザで殺処分した鶏の埋却地から、近くのため池に液体が漏出した問題で、鹿児島県は18日、住民説明会を開き、埋却物の埋め替え作業は9月以降になると明らかにした。新しい埋却地の掘削は近日中に始める。作業は台風などを考慮して、11月までに完了したいとした。

 県は、5月25日に現在の埋却地を試掘し、8月3日に作業用の仮設道路整備に着工したなどと、これまでの経緯を説明。埋め替え作業に伴う運搬時や新たな埋却地での漏出防止対策、ミスト送風機を使った消臭芳香剤の空間散布など臭気対策を示した。

 新旧の埋却地や周辺地域も合わせ計6カ所で、アンモニアと硫化水素の臭気を測定する計画も提示。ため池など3カ所で定期的に実施している水質検査の結果も報告した。

「家畜伝染病予防法」の対象となる家畜の死体は、同法第21条に基づき「死体を焼却、または埋却」するしかありません。

恒久的、かつ安全な方法としては、「焼却」に軍配が上がりますが、「移動制限」や「受入施設の有無」によっては、現場付近で「埋却(すなわち埋立)」されることも多いようです。

私、廃棄物処理法に携わったばかりの時代(20年以上前になります)の話ではありますが、
「最終処分場以外での家畜の埋立は廃棄物処理法違反とならないのか?」と、疑問に思ったことがありました。

そこで、その当時に懇意にしていた兵庫県庁環境整備課の職員に質問をすると、

「家畜伝染病予防法」は特別法なので、同法に基づいて行う殺処分後の家畜の死体処分については、廃棄物処理法の適用を受けないのです。

と教えてもらい、納得をしました。

廃棄物処理法を読めばわかる話ではありましたが、初心者にとってはどこに書かれているか見つけにくい例外規定ですので、このような状況では素直に専門知識を持つ人に質問をした方が効率的と再認識した覚えがあります。

さて、廃棄物処理法の適用を受けないとは言え、埋設現場付近で汚水や悪臭を発生させないことが大前提であることは言うまでもありません。

残念ながら、家畜伝染病予防法に基づく埋設処分は、「伝染病の迅速な封じ込め」に主眼が置かれているため、埋設後の「汚水」や「悪臭」を完全に防げるかどうかはあまり重視されていないように思われます。

農林水産省が公開している資料には、埋設処分事例として、

という画像が掲載されています。

「伝染病の迅速な封じ込め」のためには、このような埋立処分をするしかないことを理解はしていますが、
梱包は厳重に行ってはいるものの、数層のブルーシート(?)では、浸透水対策としてはかなり心許ないことも事実です。

畜産農業が盛んな地域においては、家畜伝染病対策は重要課題の一つであると思いますので、平時から「畜産農家が集中している地域内で、浸透水が流出しにくい、より安全な埋設場所はどこか?」を検討しておくべき時代に入ったのかもしれません。

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