総務省「リチウムイオン電池等の回収・再資源化に関する調査<結果に基づく通知>」の解説
今回は、2025年6月25日付で、総務省から公表された「リチウムイオン電池等の回収・再資源化に関する調査<結果に基づく通知>」から、リチウムイオン電池の回収・再資源化に関するアンケート調査結果をご紹介します。
調査の概要と背景
- 近年、市区町村が回収するごみにリチウムイオン電池(LIB)が混入し、廃棄物処理施設等での火災事故が増加
- 製品メーカーには、「資源有効利用促進法」に基づき、LIB等製品の自主回収・再資源化の義務がある
- 市区町村は、廃棄物処理法に基づき、住民が排出したLIB等の統括的な処理責任を負っているが、LIBを回収している市区町村は約7割に留まっている
- LIBの回収・処分の実態はほとんど不明
- そのため、環境省、経済産業省、1,558の市区町村を対象に「リチウムイオン電池等の回収・再資源化に関する調査」を行った
主な調査結果
1.火災事故等の発生状況
- 調査対象50市のうち、火災事故発生市は5年間(令和元年度~5年度)で38市⇒45市に増加
- 廃棄物処理施設の稼働停止等の多大な被害が生じた市は、15市(17件)
2.市区町村における回収状況
- 調査対象50市のうち、47市(94%)が何らかの回収を実施
- そのうち「定日回収」実施は24市(48%)
- 財政負担や安全面の課題で実施に消極的な市も
- 市区町村に統括的な一般廃棄物処理責任がある一方で、製品メーカーには資源有効利用促進法に基づく「自主回収」「再資源化」の義務があるため、それらのメーカーで構成される一般社団法人JBRCが、会員企業の製品を回収している
- 調査対象50市のうち、「製品メーカー等が回収すべき」とする意見が31/50市(62%)
- このうち「市は回収する必要がない」とする意見が8/50市(16%)
- 「JBRCを知らない」などとする市が2/50市(4%)
3.市区町村における処理・保管状況
- 回収したLIB等製品を埋立・焼却・ストックしている市が23/50市(46%)
- その理由は、「処分事業者が見当たらない等」が17/23市(74%)
- 「電池が破損・膨張したモバイルバッテリー」をストックしている市が95市
- ストックしている市からは、適切な保管場所・期間・方法についての情報提供を求める意見があった
4.事業者等による自主回収等の状況
- JBRC(自主回収団体)がLIB単体やモバイルバッテリーを回収(破損・膨張品等は対象外)
- 加熱式たばこ、モバイルバッテリーの製造事業者が、独自の自主回収を実施
- 電気掃除機メーカーは、LIB等を取り外しやすい設計(易解体設計)に取り組んでいる
5. 不燃ごみへの混入状況
- 43市での組成分析調査を実施
- 不燃ごみ等に混入していた5,083製品(約1.3トン)を分析
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混入が多いのは、LIB電池単体、加熱式たばこ・携帯電話・モバイルバッテリー・電気かみそり・電気掃除機など
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LIB製品のうち、電池の取り外しが容易な物は1割程度、リサイクルマーク表示は5割程度
6.LIB電池等の回収量・処分量等の全国推計
- 住民が排出したLIBの過半が、事業者の自主回収等の枠組みが利用されず、市区町村ごみとして排出
- 回収されたLIBの約4~5割が再資源化されず焼却・埋立・保管
- 資源循環施策の立案等の基礎資料として、マテリアルフローの算出が重要
総務省の意見
環境省あて
- 市町村に対し、保管・処分方法や処分先事業者情報を提供し、適正処理を推進すべき
- LIB等を再資源化できる処分事業者を育成・拡大すべき
- 破損・膨張品についても、現状の処分方法等を収集し、適切な処分事例等を情報提供するとともに、経済産業省とも連携して安全な処分策を検討すべき
- 市区町村の負担にも配慮しつつ、LIB製品の住民による排出の実態解明を推進すべき
経済産業省あて
- メーカーの回収対象品目拡大や責務履行の推進のため制度見直しを行うべき
両省あて
- 資源有効利用促進法の改正動向、製品メーカー等の回収等の取組状況、製品メーカー等の回収責務がある中での市区町村における回収体制構築の意義等の、市区町村への情報提供
総務省公表資料の要約は以上で終了です。
各地でLIBの混入を原因とする火災が激発している以上、安全な回収とリサイクルは、もはや国家的レベルの重要課題と言えます。
関係省庁と市区町村による迅速な対応を期待しています。
以下、総務省資料に掲載されていた画像に対する雑感
← 存在を知りませんでしたが、環境省制作の啓発キャラクターとのことです。
どちらのキャラクターも、背中に火が付いていることを知らずに平然としているように見えます。
日本社会の現状の問題点を端的に指摘するという狙いがあるのであれば、一流の風刺画と言えます。
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2025年6月30日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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