無許可変更による業許可の取消(福岡県)
最近は、首をかしげたくなる不適切な行政処分しか紹介できませんでしたが、久しぶりに、厳正、かつ公明な行政処分事例が現れました。
2022年3月22日付 福岡県発表 「産業廃棄物処分業者に対する行政処分について」
産業廃棄物処分業者に対する行政処分について
豊前開発環境エネルギー株式会社(以下「豊前開発」という。)は、令和元年11月から約2年にわたり、許可範囲外の産業廃棄物の処理を受託していたため、法第14条の3の2第1項第5号の規定に基づき、行政処分(許可取消し)を行いましたので、お知らせします。1 処分対象者
(1)名 称 豊前開発環境エネルギー株式会社 代表取締役 白石 康彦(しらいし やすひこ)
所在地 豊前市大字八屋2544番地61
(2)許可内容
事業範囲:中間処理(造粒固化(路盤材又は覆砂材として再生する処理に限る。))
燃えがら、ばいじん(以上2品目については、石炭火力発電所から排出された石炭灰に限る。)
許可番号:04020201213
許可年月日:平成30年4月25日
許可有効期限:平成35年4月24日2 処分の内容
産業廃棄物処分業の許可の取消処分3 処分の理由
豊前開発は、許可範囲外の産業廃棄物の処分を受託する契約を4社と締結し、令和元年11月から約2年にわたり、計2万5千トン以上を処分した。
このことは、法第14条の2第1項の規定に違反する無許可の事業範囲変更であり、法第14条の3第1号の規定に該当し特に情状が重いため、法第14条の3の2第1項第5号に規定する許可取消事由に該当する。4 処分年月日
令和4年3月22日
被処分者は福岡県豊前市の第三セクターであるため、社名と代表者氏名は省略せずに、全文を転載いたしました。
違法行為の詳細は、
当ブログ2021年12月8日付 「第三セクターによる許可証の偽造」で既報のとおりです。
昨年12月の記事更新時点では、福岡県の許可内容に「燃えがら」と「ばいじん」が含まれることしか公開されていなかったため、具体的な違反の詳細が判然としませんでしたが、
今回の発表で、「燃えがら、ばいじん(以上2品目については、石炭火力発電所から排出された石炭灰に限る。)」であったとわかりました。
発生元が「石炭火力発電所」だけに限定された、非常に珍しい許可内容であったため、「石炭火力発電所以外」から発生した燃えがら等の処理をすると、自動的に、許可内容を福岡県に無断で変更した「無許可変更」に該当します。
この第三セクターの悪質性は、許可証を偽造し、「石炭火力発電所以外」の燃えがら等の処理もできると喧伝し、2万5千トンという莫大な量の産業廃棄物を不正に処理した点にあります。
「公文書偽造」でも告発していただきたいくらいの悪質な犯罪です。
それにしても、なぜ「石炭火力発電所から排出された石炭灰に限る」という限定を付ける必要があったのでしょうか?
実際には、「バイオマス発電所から発生した燃えがら」の造粒固化を(不正にではありますが)行うことが可能な施設だったわけですから、
許可申請の際には、できるだけ多くの燃えがらを取り扱えるように「燃えがら」などと、解釈の幅を残す書き方をするのが常道です。
許可権者である福岡県が、「石炭火力発電所限定にしなさい!」と指導するとは思えないので、申請者である豊前開発環境エネルギー株式会社自身が限定的な品目で申請をしたものと思われます。
それは単なる「認識不足」だったのか、「見通しの誤り」だったのか、
はたまた、大企業と市役所といういずれも官僚的組織特有の、意味不明な「おこだわり」があったのか?
真偽の程は外部からうかがい知ることはできませんが、「燃えがら」の幅を広げるための「変更許可申請」は比較的容易であったため、「公文書偽造」という幼稚な犯罪に走った結末を考慮すると、組織内の「責任回避」と「自己保身」の積み重ねの結果、嘘に嘘を重ね続けるしかなくなったように思います。
人間は、やはり正直に生きるのが一番です。
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2022年3月25日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:行政処分