委託者から無断の再委託で許可取消
「廃棄物処理法」及び平成23年3月15日付通知の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条の3等に係る法定受託事務に関する処理基準について」に忠実、かつ厳正なる行政処分事例です。
2022年4月26日付 神奈川県発表 「産業廃棄物処理業者に対する許可取消処分について」
※被処分者の法人名称はイニシャル表記します。
5 処分の理由
有限会社Sは、排出事業者から収集運搬を委託された産業廃棄物について、法第14条第16項に違反し、排出事業者との産業廃棄物処理委託契約書で指定された運搬先の処分業者に運ばず、他者に処分を委託していた。
このことは、法第14条の3の2第1項第5号に規定する許可の取消しの要件(違反行為をし、情状が特に重いとき)に該当するため、許可を取り消した。
許可取消の対象となった法律違反は、廃棄物処理法第14条第16項で、
産業廃棄物収集運搬業者は、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を、産業廃棄物処分業者は、産業廃棄物の処分を、それぞれ他人に委託してはならない。ただし、事業者から委託を受けた産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を政令で定める基準に従つて委託する場合その他環境省令で定める場合は、この限りでない。
となりますので、
被処分者は排出事業者には無断で、委託契約書で指定されて最終運搬目的地には運搬せず、委託契約書とは別の処分業者に運搬をしていた模様です。
廃棄物処理法第14条第16項の「ただし」以降の部分で規定されているとおり、
委託者(排出事業者)から
・事前に
・書面で
再委託することの承諾を受ければ、再委託することは認められていますが、
こうした手続きを経ずに、収集運搬業者の独断で処分業者を勝手に変更することは、違法行為となります。
神奈川県の今回の行政処分は、法律に照らして誠に適正な処分ですので、「素晴らしい!」と褒めるのは逆に失礼かもしれませんが、私自身が実際に関わった最近の事例では、再委託を違法行為と認識していない自治体がありましたので、素直に称賛したくなりました。
私が関わった事例は、顧客である排出事業者から、「収集運搬業者が勝手に運搬先を変更し、産業廃棄物管理票の処分業者の名称の書き換えをしてきた」というものでしたが、今回ご紹介した事例と同様に、「排出事業者からの承諾を得ない無断の再委託」に他なりません。
収集運搬業者による産業廃棄物管理票の改ざんに該当すると判断したため、顧客には、産業廃棄物発生場所を管轄する自治体へ「措置内容等報告書」を提出するようアドバイスしました。
排出事業者としては、産業廃棄物の処分自体は完了しており、改めて生活環境保全上の措置を取る必要が無かったため、報告書を提出しさえすれば、排出事業者としての義務は履行したことになります。
しかし、情けないのは、その報告書の提出を受けた自治体が、収集運搬業者の再委託の違法性に気づいていなかったことです(苦笑)。
次にもしこのような機会があれば、神奈川県の行政処分事例を参考資料として添付した方が良いかもしれません。
横山光輝先生が描く劉表様に再登場いただきました(笑)。
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2022年5月9日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:行政処分