(第2回)運搬途中に車両を駐車場に夜通し停め続けるのは違法か?

運搬途中に車両を駐車場に夜通し停め続けるのは違法か? に、読者の方からコメントをいただきました。

〝僕はハト”様 行政指導の現状と、事業者としての不安点を簡潔にコメントいただき、ありがとうございました。

そのコメントに関する私の考えを再度書いた方が、「やって良い事」と「やってはいけない事」がさらにわかりやすくなると思いましたので、〝僕はハト”様のコメントを抜粋引用させていただきます。

私は都内収集運搬会社の社員で、以前この問題で近隣各県の行政機関に問い合わせたことがあります。概ね下記内容の回答となりました。

①基本的には廃棄物を積み込み後、自社車両基地に戻って翌日(もしくは数日後)に降ろし先に向かう行為は認められない。但し、車両故障等の不可抗力でやむを得ない場合を除く。
②上記理由は車両基地にて駐車中の臭いや漏洩等の危険、車両盗難(これで問題発覚になる事が特に多いようです)や廃棄物そのものの盗難の危険、近隣住民から「廃棄物を積んだ車がいつも止まっている」等の通報等があるため。

これらの理由により、恒常的はもとよりたまに行う事も認められないという回答が殆ど(恒常的以外なら良いと答えたところは1件だけ)でした。
ただ、長距離輸送のために途中のサービスエリア等での車中泊は問題ないようです。

単なる駐車か、それとも駐車の形を装った積替え保管行為かが紛らわしいため、行政指導として、運搬途中に運搬業者の拠点で駐車をさせたくないという事情はよくわかります。

また、常時夜中に廃棄物を満載した車両が帰ってくるというのは、配車計画が現実的でないか、隠れて積み下ろしをしているかのどちらかの可能性が高くなります。
私も、そのような慢性的な夜通し駐車は行政指導で止めてもらうか、違法行為が行われていないかの立入検査をするべきだと思います。

第1の論点

ただし、根本的に重要な点としては、
廃棄物の運搬ルートは委託契約書の法定記載事項ではないため、最終運搬先さえ契約で決めておけば、どのルートで運ぶかは基本的には運搬業者の自由となります(もちろん、収集運搬業の許可の範囲内で)。

そのため、ドライバーの交代などのために、一度運搬業者の拠点に廃棄物を積んだ車両が戻り、拠点内に駐車をすることは廃棄物処理法違反とは言えません。

他の排出事業者の廃棄物をどのようなルートで回収するか、あるいはどこで駐車をするかは、運搬業者の裁量範囲となります。

もちろん、駐車を含めた運搬の途中で廃棄物の積替え保管を行なわないという前提のお話です。

第2の論点

サービスエリアでの駐車と、運搬業者の拠点内での駐車に違いがあるかどうかについて。

紛らわしいとか、違法行為をする可能性が高いという意味での違いはあるかもしれませんが、駐車を含めた運搬の途中で廃棄物の積替え保管を行なわない限りにおいては、「車両の駐車」という意味ではまったく同じです。

しつこいくらいに強調しますが、
駐車を含めた運搬の途中で廃棄物の積替え保管を行なわない単なる車両の駐車を、廃棄物処理法は禁止していません。

もちろん、(これも繰り返し強調しますが)運搬途中で、すなわち駐車中においても、廃棄物が飛散流出させると廃棄物処理法違反です。

荷台に幌(ほろ)をかけるなど、最低限の飛散流出対策は不可欠です。
もっとも、駐車するから幌をかけるわけではなく、普通は運搬する際に幌をかけるものですが。

第3の論点

車両の駐車中は、荷台上の廃棄物を保管していることに該当するのかどうか。

ここで再び、〝僕はハト”様のコメントを引用させていただきます。

この問題での指針となる有名な通達「産業廃棄物の保管行為に係る事務処理について 」公布日:昭和60年07月08日 環衛82号での見解の、所謂連続性の意味をどう捉えるかにより、各行政の見解が違うのかもしれませんが、少なくとも関東近県では余程のことがない限りタマに積み置きしてもダメということです。

「産業廃棄物の保管行為に係る事務処理について」は、下記のとおりです。

【産業廃棄物の保管行為に係る事務処理について】

公布日:昭和60年7月8日
環衛82号

厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長宛 奈良県衛生部長照会

 左記の事項について、疑義が生じましたのでご教示下さるようお願いします。

1 産業廃棄物を収集・運搬する過程において当該物を一定期間留め置く行為は産業廃棄物の保管と解されるが、その場合、どの程度の期間留め置くことをもって保管と判断すればよいか。
2 産業廃棄物処理業(収集・運搬業に限る。)の許可取得者が新たに同一産業廃棄物の保管行為をも実施する場合、この取扱いについては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条第5項の規定に基づく産業廃棄物処理業の変更許可申請手続きを要するのか、同条第8項の規定による同法第7条第10項の準用に基づく業に係る変更の届出をもって処理すべきか。

公布日:昭和60年7月26日
衛産42号

奈良県衛生部長宛 厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長回答

 昭和60年7月8日付環整第82号をもって照会のあった標記の件について左記のとおり回答する。

照会事項1について
収集運搬してきた車両から積換え地点以降の運搬の用に供される車両への廃棄物の積換え及び運搬が連続して行われない限り、保管行為を伴うものと解して差し支えない。

照会事項2について
当該事例では、「事業の範囲」の変更に該当するものであるので、法第14条第5項に基づく変更許可により対応されたい。

率直な感想を申し上げると、質問に対する答えが抽象的なので、何を言いたいのかよくわからない文章となっています。

質問の背景をまず類推すると、奈良県の質問は、廃棄物の積替え保管行為の具体的な内容(保管に該当する期間)を問う趣旨のようです。

答えの「車両から積換え地点以降の運搬の用に供される車両への廃棄物の積換え及び運搬が連続して」行う場合を想像すると、
「ある車両荷台から別の車両荷台への直接積替え」を想定しているようです。

連続して行わない=荷台への直接積替えではない=荷下ろし場所等の特定の場所での留置=保管
と言っているだけです。

単なる駐車⇒荷台への直接積替えではない⇒保管 というのは、論理の飛躍と言わざるを得ません。
論理学でそれを証明できますが、面倒なので今回はその証明を省略します。
興味がある方はベン図を書いてみてください。

この通知は、廃棄物を特定の場所に保管する行為に関する質疑であり、駐車が保管行為に当たるかどうかについては質問に入っていません。

そのため、この通知でも、駐車が廃棄物の保管行為に該当するかどうかには言及していないことになります。

上記は、〝僕はハト”様への反論ではなく、行政指導や行政見解に対する反論として書いています。
〝僕はハト”様は、気を悪くなさらないでくださいね。
行政見解の根拠をご提示いただいたことに感謝しております。

長文で行政見解への反論を書きましたが、そもそも、第2の論点で書いたとおり、サービスエリアでの駐車と拠点内での駐車を区別することは不可能です。

それでも、最後にまた強調しておきます。
こういうのは厳禁です。

・車の荷台から廃棄物を駐車場に下ろして、そこで仕分けをする。
→積替え保管行為になるため、積替え保管の許可が必要です。

車の荷台上で廃棄物を仕分けして、別の車両に廃棄物を移し替えたり、有価物を引き抜く。
→積替えをしていることになるため、やはり積替え保管の許可が必要です。

荷台から廃棄物を飛散流出させる。
→駐車中と言えど収集運搬の一環ですので、飛散流出は絶対に厳禁です。

必要性が無いのに、廃棄物を積んだ車両を拠点で夜通し駐車させる
→取引先や行政、近隣の関係者全員から不審に思われます。不審を招いて良い事は一つもありませんので、現実的な配車計画を組み、その日のうちに運搬が終わるようにしましょう(長距離の運搬を除く)。

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コメント

  1. 僕はハト より:

    尾上様 この度は私の拙い文章にご返事頂きありがとうございます。

    そして、この問題を再度取り上げて下さった事に感謝致します。

    仰る通り「産業廃棄物の保管行為に係る事務処理について」の通知は正直回答が不明瞭なのと、廃棄物処理法に規定する保管は積み替え行為を前提とするものですので、照会の趣旨である「…どの程度の期間留め置くことをもって保管と判断…」に明確に回答しないというところに、車両に積載されたままの状態を想定して回答してはいないのでは、と私も思います。

    通知のなかの「連続」の意味が、収集運搬中の外形上の行為としての連続性と捉えており、時間軸を含めた連続としての回答をされていませんので、あえて推測すると行政側は時間軸としての連続性、つまり収集運搬中の時間経過は社会通念上(一泊~2,3日?)許容の範囲であれば問題にもならないとの趣旨なのかと勘繰りたくなります。

    尾上様のご指摘通り、この件での違法性の根拠条文等の存在は私も存じませんが、かといって排出事業者から何の根拠もなく「積み置きはダメ」と簡単に言われ、恒常的ではなく配車の都合上止む無く積み置きになる事もあるだけですと説明しても、当の行政が前述の見解で積み置きを断念した経験がままあります。

    はっきりとした行政庁の見解がでるまでか、はたまたこの問題での行政指導等の取消訴訟の判決でも待たない限りはどうしょうもないのでしょうか。

    是非この問題が行政庁のご担当者様や廃棄物業者様そして尾上様のような法律にお詳しい方々との議論の嚆矢となる事を期待します。以上です。

  2. 尾上雅典 より:

    僕はハト 様 コメントいただき、ありがとうございます。

    新たな視点をご提示いただいたお蔭で、さらに理論の補強をすることができましたので、大変感謝しております。

    行政担当官が「常に」正しいわけではない も論理的に証明可能な命題ですので、
    国民・事業者の立場としては、泣き寝入りすることなく、行政と対等の立場で議論するために、法律の知識が必要であると考えております。

    私見ではありますが、今後も冷静で緻密な議論をしていくための材料を提示させていただく所存です。

    今後ともよろしくお願いします。


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