郵便局から出る産業廃棄物ってなに?

J―CASTニュース 配達員の「郵便物窃盗」続出 金券ショップに売り飛ばす? より記事を一部抜粋・転載

配達途中の郵便物の紛失件数は09年度477件

芝支店(東京都港区)では、慶應義塾大学薬学部あての郵便物約90通を誤廃棄する事態が4月26日に発生した。管轄する郵便事業会社東京支社は、郵便物が入った輸送容器のそばに産業廃棄物の一部を誤って置いたため、処理業者が産業廃棄物と混同して、トラックに積載したと説明している。

実は、「あ~ そう 産業廃棄物業者さんのうっかりミスだったのね」では済まない話です。

第1に、郵便局から発生する産業廃棄物とは、具体的にはどんなものでしょうか?
ポリ袋などの「廃プラスチック類」なら、発生業種の限定が無いため、郵便局から発生してもおかしくありません。
しかし、プラスチックと郵便物を一緒くたに「ゴミだ」と理解して、そのまま回収される可能性は著しく低いと思われます。

ここから先は単なる推測ですが、
郵便局が回収を依頼していた廃棄物は、郵便物と誤認しやすいもの、具体的には「紙ごみ」だったのではないでしょうか。

ところが、「紙ごみ」の場合は、製紙会社や印刷会社、あるいは建設工事で発生したものという業種限定があるため、一般的なオフィスから発生するコピー用紙などの紙ゴミは、「一般廃棄物」です。

場合によると、芝支店に印刷設備を設置して、大々的に印刷をしていた可能性もあります。
その場合は、印刷業によって発生した紙くずは、れっきとした産業廃棄物になります。

安易にダンボールなどを産業廃棄物の「紙くず」として排出している企業がありますが、
その場合、杓子定規に法律をあてはめると、一般廃棄物の委託基準違反になります。

(事業系)一般廃棄物は、産業廃棄物ではないので、一般廃棄物処理業者に引き渡す必要があるからです。
古紙回収業者などの、専門で紙くずを回収している業者に引き渡す場合は、この限りではありませんが。

続いて、第2に、廃棄物の保管場所を定めていなかった可能性が高いと思われます。
廃棄物処理法第12条第2項により、産業廃棄物の保管場所には、「保管場所である旨の掲示板」を掲げる必要があります。
多くの、というよりはほとんどの企業が、この掲示板の作成を怠っているのが現実です。

大切な郵便物と、廃棄物の保管場所を明確に分けないというのは、郵便局としては大きな失態と言わざるを得ません。
この点はすぐに改善する必要があるでしょう。

最後に、第3の疑問として、
「なぜ産業廃棄物の引き渡し時に、郵便局側の人間が立ち会わなかったのか」という問題があります。

廃棄物を回収してもらう際は、郵便局側の人間が立ち会い、その場でマニフェストと一緒に産業廃棄物を引き渡すのが原則です。

誰かが立ち会えば、郵便物を廃棄物と一緒に回収されるという失態を犯すことはなかったでしょう。

もっと根本的な問題としては、産業廃棄物のマニフェストを交付していたのかどうかという疑問も残ります。

今回の事件、郵便局のみの失態ではなく、多くの排出事業者にもどれか一つは当てはまる法律違反ではないでしょうか?

是非とも、郵便局の失態を「他山の石」としてとらえ、今すぐ自社の法律違反を改善していただければと思います。

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コメント

  1. 堀口昌澄 より:

    尾上さん

    ホントですね。
    JPが法令違反していました、ということなのかもしれません。

    行政の廃棄物管理のひどさには、目を覆うものがあります。
    何とかなりませんかね。

  2. 尾上雅典 より:

    堀口 様 コメントありがとうございました。

    問題は、この手の違反をほとんどの企業が悪意なくやってしまっていることです。

    少なくとも、マニフェストの交付に関する注意点は、あらゆる企業にあてはまる原則なので、「信賞必罰」が必要な状況ですね。


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