一般的なオフィスから出る廃棄物処理の注意点

一般的なオフィスから発生する廃棄物は事業活動から発生した物である以上、「事業系一般廃棄物」か「産業廃棄物」のいずれかに該当します。

しかし、オフィスビルから発生した廃プラスチック類等の産業廃棄物であっても、
自治体によっては、その地域で発生する生活系一般廃棄物と一緒に、「合わせ産業廃棄物処理」をしてくれるところがあります。

現状で、排出事業者の当事者意識が育ちにくい理由の一つはここにあると思います。

生活系一般廃棄物とは違い、事業系一般廃棄物を処理してもらうときにはいくばくかの費用負担が必要となりますが、
種々雑多な廃棄物が入り混じる産業廃棄物とは異なり、市町村の廃棄物受け入れ単価はそれほど高くはありません。

また、廃棄物の回収場所に廃棄物を置くだけで、後は一般廃棄物収集運搬業者が定期的に回収し、清掃工場に搬入してくれている(はず)。

こうなると、排出者として必要なのは、一般廃棄物収集運搬業者への月々の支払くらいで、排出事業者の義務などという格式ばったことを考える機会もありません。

ただし、問題として挙げる以下の2点には気を付ける必要があります。

その1 排出者は誰なのか

狭義の排出事業者としては、廃棄物を排出させた事業者自身となりますので、お役所的な指導としては、オフィスの各テナントと収集運搬業者がそれぞれ契約しなければいけないとされています。

ただ、それではやはり現実的ではないと思ったのか、環境省は次のような方法を可能として見解を示しています。

・契約締結に関し、委任状を交付し委任するのであれば、各テナント会社はその排出事業者責任までをも転嫁しうるものではないが、ビル維持管理会社等が一括して委託契約を締結することは可能である。

※詳細は、当ブログ関連記事をご覧ください。
テナントビルのビル管理会社への契約委任の可否
テナントビルのビル管理会社への契約委任の可否(補足)

「マニフェストの交付者はビル管理会社でも良い」との環境省の見解も別途ありますので、排出事業者の義務に関する弾力的な解釈が逆に現場を混乱させている感じがします。

個人的には、
「テナントが発生させた廃棄物の処理責任はビル管理会社が負う」旨のビル所有者とビル管理会社の合意があれば、管理会社を排出事業者として扱う方が合理的ではないかと思います。

今のように、時と場合によって、排出事業者の属性や責任を解釈によってコロコロ変えてしまう方が、上記のような誤解を招く結果となっているためです。

いずれにせよ、現状においても、誰が排出事業者であるかは根本的に重要なポイントですので、
ビル管理会社を契約当事者とする場合でも、排出事業者としてマニフェストの交付責任くらいは自力でできるようにしておきたいところです。

誰が責任者かわからない、言い換えると、誰も責任を負わない状態が良いはずはありません。

今はたまたま市町村が廉価で合わせ産業廃棄物処理をしてくれているだけで、大阪市のように、いつ何時産業廃棄物の清掃工場への搬入を禁止に転じるかはわかりませんので。

その2 産業廃棄物の種類

合わせ産業廃棄物処理は市町村の義務ではなく、単なる行政サービスです。

また、生活系一般廃棄物と同様の性状を呈する産業廃棄物のみを、一般廃棄物と合わせて処理してあげましょうという制度です。

したがって、オフィスから発生するあらゆる産業廃棄物を市町村が合わせ産業廃棄物処理してくれるわけではありません。

一例を挙げると、小規模な医院が集まったビルから出た廃棄物の中には、手袋(天然ゴム製)などが混入していることがよくあります。

医師の科学的知見からすると、「この手袋は血液ではなく唾液が付着しているだけなので、感染性廃棄物ではない」という主張も可能ですが、
その手袋を処理してくれるかどうかは、市町村の裁量に拠ります。

「今まで手袋を受け入れていたのだから、今後も受け入れ続けろ」とは、排出事業者の立場からは強制できません。

処理業者も慎重な配慮を

上記は排出者側の注意点をまとめたものですが、収集運搬業者側にも正確な理解が必要です。

排出者には廃棄物処理法の知識が無いことがほとんどですので、そのような依頼者の無知につけこむのではなく、
プロとして、一般廃棄物と産業廃棄物のそれぞれの処理メニューを分けて提案できると最高ですね。

当事務所の顧客の中には、地場の一般廃棄物収集運搬業者の方もありますが、このような提案をしていくためにも、産業廃棄物の積替え保管許可を取得、あるいは申請手続き中のところがあります。

「今まで何の問題も無かった」から、これから先も問題は絶対に起こらないわけではありません。

まずは、自社の責任と果たすべき義務を再整理して理解することが必要ですね。

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コメント

  1. 野口 寿三男 より:

    ビル管理会社で営業をしております。

    ビルオーナーからしばしば廃棄物の処理料金についての問い合わせを頂戴します。
    オフィスビルの適正な処理料金はどのように考えればよいのでしょうか。
    また、延床面積の平均単価はどのくらいになるのでしょうか。
    ご教示頂ければ幸いです。

    千代田ビル管財株式会社 野口 寿三男

  2. 尾上雅典 より:

    コメントいただき、ありがとうございました。

    残念ながら、床面積ごとの平均単価等の統計データはありません。

    また、市町村によって廃棄物処理手数料は異なります。

    お手数とは思いますが、最寄りの市町村に問い合わせたうえで、複数の処理業者から見積もりを取るしかないように思います。


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