「中間処理業許可には積替え保管許可が漏れなくついてくるのでしょ?」の真偽

壱番屋のビーフカツ流出事件に関し、産業廃棄物処理業者が行った横流しの違法な点については、
当ブログ 2016年1月14日付記事 「処分済みだったはずの食品廃棄物がスーパーで売られるというリスク」でも簡単に振れておりましたが、その後に新たな論点を思いついたので、再度取り上げたいと思います。

処分済みだったはずの食品廃棄物がスーパーで売られるというリスク」では、ビーフカツ全量を中間処理済みとマニフェストで報告したことが、廃棄物処理法第29条の「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」の適用対象となることを書きました。

しかし、このようなわかりやすい違法行為以外にも、非常に多くの方が誤解をしている行為があります。

それが記事タイトルの、「中間処理業許可には積替え保管許可が漏れなくついてくるのでしょ?」です。

許可制度の根幹に関わる重要な内容ですので、以下、順序立てて解説いたします。

受け入れた産業廃棄物を転売するのに必要な許可

まず、この場合に必要な行動を分解します。

第1に、「廃棄物を一定期間保管する」ことが必要です。
第2に、「売れるものと売れない物を選別する」ことが必要です。

この2つの行為を行うために必要な許可は、「産業廃棄物収集運搬業の積替え保管許可」です。

産業廃棄物となる機械類を引き受け、それを手作業で分解し、売れる部品と売れない部品に分け、
売れる部品は売却、売れない部品は排出事業者が指定した産業廃棄物処分業者のところへ運搬、
という事業も積替え保管許可で行えます。

機械を用いた選別ではなく、手作業(プラスドライバー等は機械ではなく道具)で廃棄物を分解する場合は、中間処理ではなく、積替え保管許可の範疇になります。

中間処理業と積替え保管の許可は別物

問題は、上記の2点が中間処理業の一環でも行われるため、悪意なく誤解をしている人が非常に多くおられます。

特に、「廃棄物を一定期間保管する」の場合は、中間処理業の一環でも普通に行われる行為ですし、必要不可欠な工程です。

注意が必要なのは「選別」です。

中間処理業の一環として認められる選別は、

  • 機械や設備を用いた中間処理として許可された「選別」
  • 中間処理施設に投入する前の手作業による異物の除去
  • 磁力選別や風力選別等による異物の除去

となり、いずれも産業廃棄物の中間処理を円滑に行うために必要な異物の除去が本義となります。

このように、行為の外形上も、許可の区分上も、中間処理業と収集運搬業(積替え保管を含む)許可はまったくの別物となります。

「一定期間の保管が重なるから」という理由で、中間処理業許可に積替え保管許可が含まれることはなく、
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中間処理業許可に積替え保管許可が当然内包されるわけでもなく、
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中間処理を伴わない廃棄物の売却をしたい場合は、積替え保管許可を取るしかありません
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問題となった業者の許可内容は?

愛知県の許可情報によると、ダイコーは中間処理業許可だけではなく、動植物性残さの積替え保管許可も取得していました。

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「動植物性残さ」に関しては、一つの会社に「中間処理業」と「積替え保管許可」の2つの許可がある状態となっています。

愛知県の立入検査でも不正が見抜けなかった背景には、この(万全な)許可内容があったものと思われます。

積替え保管許可を持っている業者である以上、中間処理をせずに売却をしたとしても違法ではないからです。

ただし、その場合でも、電子マニフェストで「全量中間処理済み」と報告するのは虚偽報告となり、違法です。

売ったのであれば、「3万トン売却」と有価物の抜取り量を記載しないといけません。

仮に、このケースで「動植物性残さ」の積替え保管許可が無かったとしたら、
積替え保管許可を受けずに積替え保管を行うという「無許可営業」か「無許可変更(他の産業廃棄物の積替え保管許可は持っているが、動植物性残さについては無許可の場合)に該当します。

そうなると、廃棄物処理法第29条よりも重い、第25条の罰則「5年以下の懲役、また1千万円以下の罰金、もしくはこれの併科」の適用対象になる可能性が出てきます。

このように、中間処理業者が無許可で積替え保管行為を行うのは非常に危険ですので、心当たりがある処理業者の方は、いますぐその行為を止め、新たに積替え保管許可を取得する必要があります。

※「選別」に対する環境省の公式見解は、当ブログの下記記事でも解説しています。
2009年7月8日付「中間処理前における廃棄物の選別

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