2010年廃棄物処理法改正の解説(3) マニフェストA票と処理困難通知

8月3日に発行した、メールマガジン「よく分かる!!廃棄物問題」から転載します。

※パブリックコメント募集前の政省令案を、メルマガの配信よりも先に知りたい方は、下記のURLをご覧ください。
http://www.env.go.jp/council/03haiki/y0320-13/mat02.pdf

第3回目は、マニフェストA票の保存義務と処理困難通知について解説します。

まず、マニフェストA票は、今回の法律改正によって5年間の保存義務の対象となりました。

え!?元々A票を保存するのは義務だったんじゃないの?

法律上の観点からだけ言うと、2010年の改正以前は、A票の保存義務はありませんでした。

とは言っても、A票を保存していないと、どんなマニフェストを発行したのかわからなくなるため、実務的には、ほとんどの企業がA票も保存していたものと思います。

今回の法律改正は、「排出事業者には廃棄物の処理責任があるのだ!」と高らかに宣言している改正内容が多いのですが、マニフェストA票の保存義務付けの場合は、特に、排出者自身の義務を印象付ける狙いがありそうです。

新たに保存義務の対象が増えると、それだけ実務的なミスが増える確率も高くなりますので、念のため、マニフェストの保管方法に不備が無いかを、再確認しておくと良いでしょう。

ちなみに、マニフェストA票の保存すべき期間は、
マニフェストの「発行後」5年間ではなく、「マニフェストE票が返ってから」5年間となっています。

マニフェストを発行した日付だけを見て、「5年前に発行したものだから捨ててしまおう」ではなく、「マニフェストE票が返ってきた日」を確認するようにしましょう。

続いては、産業廃棄物処理業者の「処理困難通知」です。

「処理困難通知」とは、

委託された産業廃棄物の処理が困難となったときに、産業廃棄物処理業者が、委託者(排出事業者)に対して、「あなたに頼まれた廃棄物の処理ができなくなりました」と、書面で出す通知のことです。

通知を出すべき対象となる事態は、

・産業廃棄物処理施設の故障や事故
・産業廃棄物処理事業の廃止
・産業廃棄物処理施設の休廃止
・役員などが欠格要件に該当
・埋立終了(最終処分場の場合)
・行政処分を受けた

という場合が、「限定的に」列挙される予定です。

つまり、上記の6つ以外の原因、例えば、「社員旅行に行きますので、2日間休業します」というような場合は、社員旅行から帰ってくれば、すぐに溜まっていた廃棄物の処理が行われる可能性が高いので、「処理困難」とはみなされず、委託者に書面で通知をする必要もありません(笑)。

そのため、「行政処分を受けた」という場合を具体的に書くと、
「事業停止命令」、「施設の使用停止命令」、「施設設置許可の取消」、「措置命令」、「改善命令」などの、操業が事実上行えなくなるような行政処分を受けた場合が、処理困難通知の対象となります(と言うより、なりそうです。)

さて、処理業者から処理困難通知を受けた委託者(排出事業者)は、
生活環境の保全上の支障の除去や被害発生の防止など、必要な措置を講じ、通知を受けた日から30日以内に、措置内容等報告書を都道府県知事に提出することが必要になります。

これは、処理業者からマニフェストの返送を受けない場合に必要な措置と同様です。

そのため、まったく新規の義務ではなく、今まで課せられていた義務の対象が若干広がった、ということになります。

通知をした処理業者は、通知した書面を、通知後5年間保存しておかねばなりません。

紙切れを1枚送りつければ、後は排出事業者が勝手に処理してくれる!
という魔法のような手続きではなく、

二度と仕事を受注できなくかもしれない、非常に不名誉な通知手続きになりそうですので、この手続きの実効性がどこまで担保できるのかは少し疑問です。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ