埼玉県がDOWAハイテック社に損害賠償請求する方針

当ブログでも既報のとおり、 DOWAハイテック社の委託基準違反は行政指導で決着
行政指導で決着したヘキサメチレンテトラミン流出事件ですが、
埼玉県がその後始末にかかった費用4,000万円をDOWAハイテック社に請求する方針を固めたようです。

ホルムアルデヒド問題で損害費用請求へ

ことし5月、利根川水系の浄水場の水道水から国の基準を超す化学物質のホルムアルデヒドが検出された問題で、埼玉県は化学メーカーが不十分な形で工場廃液の処理を委託したのが原因だったとして、一連の対応にかかった費用およそ4000万円を請求する方針を固めました。

利根川水系の浄水場では、ことし5月、水道水から国の基準を超すホルムアルデヒドが検出され、一時、36万世帯近くが断水する影響が出ました。
この問題では、埼玉県本庄市の化学メーカー「DOWAハイテック」が、原因となった化学物質を含む廃液の成分を正確に伝えずに産業廃棄物処理業者に処理を委託した結果、廃液が十分に処理されずに川に流されたのが原因とみられています。
このため埼玉県は、水道水からホルムアルデヒドを取り除くためにかかった材料代や人件費などとしておよそ4000万円を「DOWAハイテック」に請求する方針を固め、今月中にも千葉県や茨城県、それに東京都と共に交渉を始めることにしています。
これについて「DOWAハイテック」は、「埼玉県の考え方を聞いていないので、今の時点では何とも言えない」と話しています。

当初から、埼玉県はDOWA社に損害賠償請求をする意向を示しておりましたが、
それならそれで、行政指導ではなく、DOWA社に対し改善命令くらいは出していた方が良かったですね(笑)。

ヘキサメチレンテトラミンを流出させたこと自体は罪に問えないとしても、処理委託が不適切だったことは明らかでした。

まだ埼玉県は提訴していないようですが、発表どおりに提訴されるとして、DOWA社の行為は損害賠償請求の対象となる不法行為と言えるかどうかを検証してみます。

民法709条では

(不法行為による損害賠償)
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

と定められていますので、

少なくとも、DOWA社の行為に故意または過失がないと、DOWA社に損害を賠償する責任はありません。

まずは「故意」についてですが、
主観的な意図を外部からうかがい知ることはできませんが、報道を見る限りでは、「浄水場でホルムアルデヒドを発生させてもいいんだ」とDOWA社が思っていた節はありませんので、故意には該当しないように思えます。

次は「過失」
廃液の不適切な処理委託によって生じる結果を「予見できたか」、そしてその結果を「回避するために十分な努力をしたか」が争点となります。

DOWA社における「予見性」については、埼玉県が事件発生直後にいち早く記者発表したとおり、DOWA社は過去に同様の水質事故を起こしていますので、浄水場におけるホルムアルデヒドの生成を「予見できた」可能性が高いと思われます。

「回避するために十分な努力をしたか」についても、(委託先の処理状況確認をしていたかどうかは不明ですが)委託先の処理業者では処理できない産業廃棄物の処理を委託している以上、結果回避のための努力を怠ったとみなされる材料になります。

こうして考えると
故意はまだしも、過失については、DOWA社に非常に不利な状況となりそうです。

無駄に裁判費用をかけるよりも、自発的に損害を賠償する方が得策かと思います(笑)。

とはいえ、埼玉県がDOWA社を提訴するかどうかが確定していませんので、事態がどう動くかはまだわかりませんが、廃棄物処理法務的には大変興味深い事例となりそうです。

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