2010年改正の解説(8) 熱回収施設設置者認定制度

11月5日に配信したメールマガジンを転載します。

第8回目は、熱回収施設設置者認定制度に関する改正内容について解説します。

今回解説する「熱回収施設設置者認定制度」とは、地球温暖化対策の一環で新たに作られた制度です。

具体的には、焼却熱によって発電などを行っている焼却炉の設置事業者を特別に認定し、認定された事業者には、産業廃棄物の保管容量を少し増やしてあげましょう!

という制度です。

この制度が出来たことによって、地球温暖化対策が進むとは論理的には思えませんが、少しでもその理想に近づくべく、焼却炉に何らかの熱回収設備を導入させるための措置と言えます。

認定を受けることによって増える廃棄物の保管容量は、
従来の「14日分」から「21日分」と、7日分が増えることになります。

メリットとも言えない、微妙な違いです。(;一_一)

そして、焼却炉であればどんなものでも認定を受けられるわけではありません。

認定の対象となる焼却炉は次のとおりです。
まずは、技術上の基準から

  1. 熱回収に必要な設備(ボイラー又は熱交換器)が設けられていること。
  2. 熱回収によって得られる熱量を連続的に測定し、かつ記録するための装置
    (発電にあっては電力計、熱利用にあっては圧力計、温度計及び蒸気の流量計)が設けられていること。
  3. 廃棄物、廃棄物の処理に伴い生ずる排ガス等による腐食を防止するために必要な措置が講じられていること等、廃棄物処理施設の技術上の基準に適合するものであること。

この基準は、熱回収を行う焼却炉なら、どれも一般的な設備となりますので、それほど問題にはならない基準です。

次は、認定を受けるための能力的な基準です。

認定を受けるためには、
熱回収施設において、10%以上の熱回収率で熱回収を行うことを内容とする事業計画を有し、かつ当該計画を的確かつ継続的に実施するに足りる能力を有すること

となりそうです(現在はパブリックコメントの募集中で確定していないため)

ただし、投入熱量全体の30%を超える範囲で外部燃料を利用する場合は、認定を受けることができなくなっています。

燃料を大量に用いて熱回収をするのであれば、燃料を使って発電をしているのと一緒だからですね。

問題視したいのは、「10%」という大変低いレベルの熱回収率で、簡単に認定が受けられることです。

認定の対象のハードルを低くして、少しでも多くの焼却炉に熱回収設備を設置させたい ということなのだと思いますが、10%というのは、志が低すぎると言わざるを得ません。

少しでも地球温暖化対策を進めたいのであれば、どうせならもっと高い熱回収率を義務付け、設備改善を一挙に進めざるを得ないような施策にした方が良かったと思います。

どのみち認定を受けてもほとんどメリットが無い以上、対象を制限しても、それほど大きく減らないと考えられるからです。

ではなぜ、今回の政令改正では「10%」という非常に弱気な数字が出てきたのでしょうか?

熱回収施設設置者認定制度は、市町村は対象となりませんが、
市町村が設置している焼却炉の発電効率が目安となっているようです。

環境省の調査では、平成20年度末現在で、日本には焼却炉が1,269施設あったそうですが、そのうち発電設備を有しているのが300施設でした。

その300施設のうち、発電効率20%以上の焼却炉は、たったの14施設しかなく、割合にすると4.7%しかありません。
焼却炉全体での割合にすると、たったの1.1%!

発電効率10%以上にまで対象を広げると、対象となる焼却炉の数が188施設となり、こうなると発電している焼却炉の63%以上が対象となります。
発電をしていない焼却炉を含めた焼却炉全体に対する割合でも、14.8%と、大幅に増えたように見えます。

上記の数値は市町村が設置した焼却炉に関する統計ですので、産業廃棄物処理施設の場合は、少し条件が変わってきますが

あまりに高い目標を設定しても達成できないだろうから、現状でも達成できそうな数値目標にしておこう という妥協の産物と言えそうです。

努力しなくても達成できる数値を目標にすることは、目標設定で一番やってはいけないことですよね!
目標としての存在意義がありません。
 

このように、熱回収施設設置者認定制度は、期待とは裏腹にユルユルの制度となりそうです。

将来に向けた環境省の布石として、しばらく生ぬるく見守りたいと思います。

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