法改正のための検討項目(2)-2(経理的基礎ってなに?)

「経理的基礎がある」とは、「産業廃棄物処理業を的確に、かつ継続して行うに足りる財政的基盤があること」と定義できます。

「経理的基礎の有無」は、産業廃棄物処理業の許可条件の一つです。

言いかえると、都道府県知事は、経理的基礎が「無い」業者に対しては、産業廃棄物処理業の許可を出してはならないということになります。

では、「経理的基礎がある」とは、具体的に資金がいくらあれば良いのでしょうか?

100万円?

それとも1億円?

その答えは、廃棄物処理企業の事業規模や、事業の内容によって異なります。

最終処分業の場合は、維持管理費用や用地取得費として、数億から10億円程度の資金が必要になることが大半です。

収集運搬業の場合は、極端な話、車1台を用意できれば、事業自体はすぐ行えます。

このように、具体的な金額で、経理的基礎を明示するのは困難ですので、廃棄物処理法にも詳しくその内容は定義されていません。

法律には明示されていませんが、産業廃棄物処理業の許可を出す際に、都道府県知事は、その事業者の「経理的基礎の有無」を審査しなければなりません。

実務においては、事業者に具体的な現預金の額や負債の有無などを申告させ、その内容を審査するケースがほとんどです。

場合によっては、申告内容の裏付けとして、預金通帳のコピーや残高証明書をつけさせることもありますが、大半は自己申告の内容のみに基づいて判断します。

行政としては、法律や施行規則に具体的な審査基準が書いていない以上、上記のような方法で審査せざるを得ず、その結果「経理的基礎がある」と判断できる案件に対しては、許可をしなければなりません。

近年、最終処分場をめぐる住民訴訟が増加しており、経理的基礎の有無に関して、「行政の判断が適切ではなかった」という判決が出た実例があります。

上述したように、行政としては、「法律に則って審査をしている以上、これ以上つっこんだ内容の審査は無理だ」という悩みがあります。

経理的基礎を十分に有する企業に操業させ、近隣住民の生活環境を守ることが何よりも優先されます。

「行政の悩み」と「住民の不安」の両方を解消するためには、まず、「経理的基礎を確かめるための具体的な基準」を明確にして行く必要があります。

ちなみに、環境省が設置した「経理的基礎の審査等に係る経理専門委員会」で検討されている、経理的基礎の具体的な審査項目案は以下のとおりです。

1. ア及びイの条件をともに満たしている場合、経理的基礎を有するものとする。

ア.過去3年間の損益平均値から判断して利益を計上できていること 又は 自己資本比率が1割を超えていること
イ.申請事業にかかる事業計画に沿った収支計画(事業収支計画書)において、少なくとも収支相償していること 申請事業にかかる収支計画が収支相償していない場合は、廃棄物処理部門あるいは企業全体としては、少なくとも収支相償していること
2.経理的基礎の有無の判断に当たっての、主な留意事項は以下の通り。

ア.申請者が上記1.アの条件を満たさない場合であっても、「直前期が黒字であること」又は「債務超過でないこと」が確認できる場合、申請者から事業改善計画書(赤字計上等の要因、事業改善方策、改善スケジュール、実施管理体制と実施責任者等を記載したもの)を徴し、審査の結果、容認される余地があるものとする。
イ.申請事業にかかる事業収支の審査にあたっては、必要な資金の総額の妥当性やその資金を調達できるか否かに留意する。
ウ.許可権者は、経理的基礎を有さないと判断するにあたっては、金融機関からの融資の状況を証明する書類等を必要に応じて提出させ、また、商工部局、労働経済部局など他部局の協力を求めるほか、補完的に中小企業診断士、公認会計士等専門家から意見を求めるなどして、慎重に判断するものとする。
3.廃棄物処理法施行規則の見直し
<現行>  貸借対照表、損益計算書
<修正案> 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表
4.現行運用通知の見直し(主なもの)

ア.「事業の開始に要する資金の総額」の例示に「事業の用に供する不動産に抵当権等が設定されている場合はこれを抹消するために必要な費用」を追加(不動産登記簿謄本で確認。許可直前に最新版で再度確認することを推奨)
イ.「事業を的確かつ継続して行える経理的基礎」の有無の判断基準及び留意事項について

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